ENCRYPTED EMOTIONS
取引画面の板は、一瞬映っては消えていきます。このサイトでは bitFlyer の板を毎日6時間ぶん積み上げて立体にし、そこで仮想のデイトレーダーが AI の合図で売買したらどうなったかを、毎日記録しています。
毎日100万円から始めた場合の損益です。売買はすべてスプレッド込み(買いは売り気配、売りは買い気配で約定)で、取引手数料は含みません。
板は「この価格で買いたい」「この価格で売りたい」という、まだ実現していない気持ちです。約定した価格は、その気持ちどうしが交わった結果にすぎません。気持ちはいつも、結果より先にあります。この図は、その気持ちのほうを見るためのものです。
図には、取引画面でおなじみの価格の線、移動平均、ボリンジャーバンドも描いてあります。板の層を消せば、普通のチャートとほとんど同じです。
ただし、移動平均もボリンジャーバンドも、すべて約定した価格、つまり結果から計算されたものです。この図では、その下に結果より先にある気持ち(板)を一枚敷いています。
取引画面の板は、その瞬間のスナップショットです。次の瞬間には書き換わり、さっきまでそこにあった注文は記憶にしか残りません。しかも板は、約定した価格と違ってデータの量が多いため、ふつうはどこにも保存されていません。
この図は、1分ごとの板を6時間ぶん並べて地形にしています。壁がいつ現れ、どれだけ居座り、いつ消えたかを、あとから一枚で見渡せます。
板の可視化では、いまの価格(中値)を真ん中に置き、その上下に板を描くのが一般的です。これは数秒から数分の売り買いのための見方で、価格が動くたびに壁も上下にずれてしまいます。
この図は縦軸を絶対価格にしています。12,200,000円に置かれた壁は、時間が経っても同じ高さに尾根として続き、価格はその地形の中を川のように流れます。
絶対価格で6時間を積み上げると、価格の川の周りで現れては消える細かい板(数分単位の駆け引き)の向こうに、何時間も同じ価格に居座る壁が浮かびます。
12,000,000円のような大きなキリのいい価格には、「ここまで来たら売る」「ここまで下がったら買う」という、数分ではなく数時間〜数日の構えが置かれ続けます。図の横に長く走る赤い帯がそれです。川が長い壁に近づくとき、短い駆け引きと長い構えがぶつかります。
取引画面では、さっきまであった壁が消えても「なくなった」としか分かりません。この図では、壁と約定の価格が同じ座標にあるので、消え方が見えます。
価格の線が壁にぶつかって削られたなら、本当に売りたい人・買いたい人がいて、実際に食われた壁です。価格が届く前に壁だけがふっと消えたなら、置いてあったのに使われずに引っ込められた注文です。
板が分析に使われるときでも、多くは最良気配(いちばん高い買いといちばん安い売り)や、板全体をまとめた粗いヒートマップに丸められます。ある時刻の一枚を切り出すだけで、時間とともにどう変わったかも捨てられがちです。
このサイトでは、板の形(手前と奥のどちらが厚いか、どこに壁があるか)と、その形が5分・15分でどう塗り替わったかを残しています。図でも、AI の手がかりとしても。
日本で見るビットコインの価格は、ドル建ての価格にドル円をかけたものです。円安が進むと、ドル建てでは下がっていても、円建てでは横ばいや上昇に見えることがあります。同じ商品なのに、米国の人は売りたく、日本の人は買いたい、ということが起こります。
図の地形の色には、ドル円の動きを混ぜています。土日は為替市場が閉まるので、色は変わりません。日経平均やナスダック、海外の取引所の板も集めていて、今後の記事に取り込んでいく予定です。
同じ時間に流れていたニュースを、図の時間軸に吹き出しで置いています。ニュースが価格に影響したかどうかは分かりません。ただ、板に注文を置いているのは、それを目にしていたかもしれない人間です。因果は決めつけずに、並べて置くだけにしています。
記事に登場するのは、「そういう人もいるだろうな」という一人の仮想のデイトレーダーです。株式市場と同じ朝9時に始めて、15時に手じまいます。空売りはせず、上がると思ったら全額で買い、売るときは全部売る。どこにでもいそうな、普通の個人です。
6時間が終わってから振り返り、同じルールで一番儲かった売買。「このルールで最高の利益を出すなら、こうするべきだった」という事後の正解です。その場では誰にも選べません。
時間に沿って、その時点までに見えていた板の形と変化だけで「今買うべき」「今売るべき」を判断し、その合図どおりに売買していたらどうなったか。過去のデータでの再現です。
9:00 に買って 15:00 に売るだけ。何も判断しない人の成績です。簡単そうで、上がる日には持っているだけで全部取れるので、これに勝つのは意外と難しい物差しです。
AI の中身はニューラルネットワークです。ニューラルネットワークには、人間の言う意味での「理由」がそもそもありません。数字の重みの塊から「今買え」が出てくるだけで、本人に聞いても答えは返ってきません。それでは、読む人にはわけが分かりません。
そこで、AI の判断を真似るように学習させた浅い決定木を別に用意しています。「買い板の手前が薄いか」「板の形が15分で大きく塗り替わったか」といった分かれ道をたどり、記事ではそれを「買った理由」「売った理由」として言葉にしています。結果的な最善の売買にも、その時刻の板の様子から理由を添えています。
だからこの理由は、AI の内側にある真実ではありません。理由を持たない判断を、外から人間の言葉で読み解いたものです。木の見立てと AI の判断が食い違う場面もあります。記事の理由は「AI の判断を人間の言葉にすると、たとえばこうなる」と読んでください。
AI予測と結果的な最善には、当然差があります。記事の最後の「反省」では、結果的な最善の売買それぞれについて、AI と同じ条件で、その5分前までに見えていた板を振り返ります。もし最善を選べたとしたら、どこに目をつけていればよかったのか。それを、AI が実際に頼った手がかりと見比べています。
この AI の特徴は、板の形とその変わり方を判断の材料にしていることです。ただ正直に言えば、板の情報を十分に読み取れていると言えるほどではまだありません。成績が悪い日も、そのまま記録しています。板の気持ちは本当に先を読ませてくれるのか。まだうまく読めていない AI と一緒に、毎日確かめていく日誌です。
データの収集から、図、売買の計算、記事の文章まで、毎日プログラムと AI が自動で作っています。数値と売買はプログラムが計算したもので、文章はそれを言葉にしたものです。